ブログを始めてから増えたたのしみのひとつは、写真を見ること。
写真ってそれまでは何の気にも留めず眺め、自分が撮る時はシャッターを押せば撮ることのできるもの、目で見たものがそのままま写るものだと思っていました。
写真の奥深さに魅了されるにつれ、写真って撮る人が描く作品だ、撮る人が作品の向こうに透けて見えることもある、ということを感じ心動くようになりました。
みんなはとっくに知ったり気づいていることにこんなに遅くになって気づきますが、それはそれで生まれたての眼を持った気分になったりします。
この前観てきた京都駅の「美術館「えき」」で催されている「イジス写真展ーパリに見た夢ー」は、作品から撮る人イジスの姿がじんじん伝わってきて、切なくて心を大きく揺さぶられました。
入り口から圧倒されるのは、イジスの写真家としての出発点を物語っているレジスタンスの闘士たちのポートレイト。
リトアニア生まれのイジスが20代で画家を夢見てパリへ、その後ユダヤ人であるイジスはナチスの手を逃れたリモージュでレジスタンスのポートレイト撮影をします。
機材も限られた中で白いバックに後光を背負い撮った写真たち。
終戦後はイジスの言う光の都であるパリを拠点に写真家として活動、「パリ・マッチ」と長年協力関係を築きます。
一転して恵まれた写真家生活を送ったイジスだけれど、ファインダー越しに選んだのは周縁の人々やアウトサイダーたち、マージナルマンたち。
セーヌ川やエッフェル塔をのぞみ、パリの街が霞む美しさの中に、生のすぐ隣に死が横たわっている気配漂う写真たちは、哀愁に満ちています。
カミュ、ルオー、グレコ、エディット・ピアフ…交友のあった芸術家たちのポートレイトは、イジスの前で無防備なまでに内面をさらけだしているように映ります。
ダンサーで振付家のローラン・プティも。
その中でイジスを最も魅了したのはマルク・シャガール。
最初はユダヤ人という共通点から近づいたふたりは心が通い合い、シャガールはパリ・オペラ座の天井画の制作取材をイジスのみ許可したほど。
自分の描く色彩の海、夢の間に溶け合っているように見えるシャガール。
1枚1枚の写真が静かな詩のようなイジスの世界に魅了されたひと時でした。
イジス展ーパリに見た夢ー 2月26日まで
美術館「えき」KYOTO
美豊ホームページ http://homepage3.nifty.com/bi_ho